2014/06/02

「半額以下」格安スマホは日本のスマホ料金を“適正化”に導くか

イオンなど異業種が相次いで格安のスマートフォン(高機能携帯電話)の提供を始めた。これまでは安さと引き換えに通信速度や端末性能が大手携帯電話会社よりも劣っていた。ところが、関西電力系の固定通信会社ケイ・オプティコムが3日に始めるスマホサービスは高速データ通信サービス「LTE」を使い、セット売りする端末は京セラ製の量産モデルを採用しながら料金は大手の半額以下。ケイ・オプティコムは、格安スマホをためらっていたユーザーへの普及を狙っており、消費者にとっては選択肢が広がりそうだ。

 ■予約の半分は首都圏

 ケイ・オプティコムは3日、「mineo(マイネオ)」ブランドでスマホのサービスを全国で始める。イオンやビックカメラなどと同様に、大手携帯電話会社から回線を借りるMVNO(仮想移動体通信事業者)となる。MVNOとして初めてKDDI(au)の回線を用いる。従来のMVNOスマホはすべてNTTドコモの3G回線だ。

 月額料金はデータ通信のみが980円、090通話付きが1590円。京セラ製「DIGNO M」をセット購入した場合、割賦は2千円(24回払い)となり、大手料金の半額程度となる。

 マイネオの予約申し込みは、5月15日の予約開始から2週間あまりで1万人を超えた。このうちおよそ5割は首都圏の人が占め、30代~50代が大半だという。ケイ・オプティコムの担当者は「非常に好調な滑り出し。40代が予約全体の4割を占めるのも想定どおりだ」と自信を見せる。

 ■通信量ごとに選択肢

 「想定どおり」とは、データ通信量ごとの“すみ分け”だ。マイネオはauのLTE回線を使う。通信速度に制限がかかる1カ月あたりのデータ通信量の上限は、auの7ギガバイトに対しマイネオは1ギガバイトに設定した。

 業界の各種アンケートでは、大手3社のスマホ利用者の5~7割が月に1~2ギガバイト程度しか使っていないという結果が出ている。ケイ・オプティコムの担当者は「LTEの利便性はそのままだ。月1ギガバイトに収まる人が当社を選んでくれるのではないか」とみている。

 マイネオは1ギガバイトを超過しても100メガバイトあたり150円の追加料金を支払えば通信量を追加できるようにした。

 総務省関係者は「少ししかデータ通信をしない大半の利用者が、一部のヘビーユーザーの分まで料金を負担しているのが現在の大手3社のプラン」と指摘。マイネオはそれぞれにニーズに沿ってスマホを使いたいという30代~50代の受け皿になる可能性がある。

 ■料金高止まりに風穴か

 イオンが4月から発売した格安スマホは、端末と通信・通話サービスのセットで月2980円、ビックカメラはは月2830円と、いずれも3千円を下回る。ただ、イオンの通信速度は1秒あたり200キロビットと、LTEの数百分の1。実質的にテキストメールの送受信にしか使えず、ビックカメラの通信速度もLTEの10分の1前後にとどまる。端末も指定機種のみだ。

 それでも、こうした性能だけで十分という利用者にとっては、料金の安さは魅力だ。ただ、大手はサポート体制が充実している。

 MVNOの増加は、高止まりする大手の料金に影響する可能性がある。ドコモが6月1日から提供する国内通話が定額制の新プランは、予約が想定を大きく上回って120万件を超えた。新プランはデータ通信量の上限に2ギガバイトのコースを設けたほか、通信容量を家族で分け合うことで料金総額を抑えることができる仕組みにしている。

 総務省によると、東京は世界主要7都市のなかで3番目にスマホ利用料金が高い。電波は国民全体の資産だ。MVNOの台頭でスマホ料金が適正化に向かうことが求められる。

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