2010/09/15

モバイル無線LANルーターの登場で「無線LANブロードバンドルーター」と「データ通信カード」カテゴリの人気が上昇中


ここのところ、「モバイル無線LANルーター」と呼ばれる製品が注目を集めている。モバイル無線LANルーターとは、家庭などでインターネット接続に利用している無線LANルーターをモバイル環境でも使えるようにした小型のポータブルルーター製品のこと。内蔵バッテリーで駆動し、携帯電話の各キャリアが用意する3G回線や、WiMAXなどの無線WAN回線を使って、インターネットに接続する。従来のデータ通信カードと違って、パソコン以外の携帯ゲーム機や「iPad」などの携帯デバイスともワイヤレスで手軽に接続できる点が、最近特に人気を呼んでいる理由だ。
図1、図2は、価格.comの「無線LANブロードバンドルーター」カテゴリと「データ通信カード」カテゴリにおけるアクセス数の推移を「価格.comトレンドサーチ」で示したものだ(家庭・オフィス向けの据え置きタイプやノートパソコン向けのカードタイプ等も含む)。両カテゴリとも、2009年1月時点と比べてアクセス数が大幅に上昇しており、いずれも1.7倍程度のアクセス数増を記録していることがわかる。
【図1 「無線LANブロードバンドルーター」カテゴリのPV数推移】
【図1 「無線LANブロードバンドルーター」カテゴリのPV数推移】
【図2 「データ通信カード」カテゴリのPV数推移】
【図2 「データ通信カード」カテゴリのPV数推移】
また、図3は、「価格.comトレンドサーチ」を利用して、「無線LANブロードバンドルーター」と「データ通信カード」の両カテゴリに登録されている製品のうち、モバイル無線LANルーターとして分類できるものをピックアップし、そのアクセス数の合算を示したもの。この図を見ると、2009年11月以降に本格的な市場が立ち上がったモバイル無線LANルーターは、2010年5月に急激な伸びを見せ、6月29日には12万PVに迫るまで上昇している。この動きは、図1・図2で示した「無線LANブロードバンドルーター」カテゴリと「データ通信カード」カテゴリの人気上昇の動きと一致する部分が多く、モバイル無線LANルーターの人気が、両カテゴリの人気を底上げしている様子がうかがえる。
【図3 モバイル無線LANルーター製品のPV推移】
【図3 モバイル無線LANルーター製品のPV推移】

「iPad」の登場によって火が付いた「モバイル無線LANルーター」の人気

このモバイル無線LANルーターの急激な人気上昇の要因としては、この時期に発売されたアップルのタブレット端末「iPad」の存在が大きい。「iPad」はソフトバンクの3G回線とWi-Fiの双方に対応した「3G+Wi-Fiモデル」とWi-Fiのみに対応した「Wi-Fiモデル」の2種類がラインアップされているが、このうち、3G回線に対応しないWi-Fiモデルを購入するユーザーが、外出先でも手軽にインターネットを楽しめるようにと、このモバイル無線LANルーターに注目しだしたのが、人気の発端だ。iPadのWi-Fiモデルとモバイル無線LANルーターとを組み合わせることで、iPadの3Gモデルと同等の使い勝手が得られるだけでなく、より高速な通信速度でインターネットを使えるようになる(使用する回線やプロバイダによる)というメリットもある。このため、パソコンなどに詳しいユーザーの多くが、iPadを購入する際には価格の安いWi-Fiモデルを選び、それといっしょにモバイル無線LANルーターを購入するという行動に出た。これが、この時期に、モバイル無線LANルーターの人気が急上昇した大きな理由と言えるだろう。

一番人気は、多様な接続に対応する、バッファロー「Portable Wi-Fi DWR-PG」

モバイル無線LANルーターとひと口に言っても、さまざまな種類の製品が存在するが、その中で、どんな製品が注目を集めているだのだろうか。図4はモバイル無線LANルーターの主要製品のPV数推移を示したもの。これを見ると、前述のiPadの登場とほぼ時を同じくして発売されたバッファローの「Portable Wi-Fi DWR-PG」が、その他の製品を大きく引き離す人気を得ていることがわかる。
【図4 モバイル無線LANルーター主要製品のPV数推移】
【図4 モバイル無線LANルーター主要製品のPV数推移】
このバッファロー「Portable Wi-Fi DWR-PG」は、名刺サイズのボディながら、ドコモの3G回線、公衆無線LANスポット(Wi-Fi)、自宅の有線LANという3種類のインターネット回線に接続できるのが特徴の製品で、3種類の回線から最適なものを自動的に選択して接続してくれる機能も備えている。“1台3役”で使えるだけあって、「無線LANブロードバンド」カテゴリの売れ筋ランキングでも8位(2010年8月16日週)と人気が高い。図5のクチコミワードランキングでも、「接続」「設定」「使用」といったワードが上位にあり、購入したユーザーあるいは購入を前提としたユーザーによる具体的な使用に関する書き込みが多いのが特徴的。また、「ドコモ」「docomo」といったワードも上位にランクしており、一般に品質が高いと言われるドコモの3G回線を利用できることも、この製品の大きな人気の要因となっているようだ。
【図5 バッファロー「Portable Wi-Fi DWR-PG」のクチコミワードランキング】
【図5 バッファロー「Portable Wi-Fi DWR-PG」のクチコミワードランキング】
いっぽう、2009年10月から、この分野ではトップの人気を維持してきたイー・モバイルの「Pocket WiFi D25HW (にねんM)」のクチコミワードランキングでは、「利用停止」「混み」「混線」「キャンセル」など、やや印象の悪いキーワードが目立つ。8月16日週の頻出キーワードでは「解約」がトップとなっており、厳しい評価がなされているのがうかがえる。クチコミを見ても、都市部在住者などで受信感度に満足しているユーザーがいるいっぽうで、地方では受信感度がよくないというユーザーもおり、「解約したいものの、違約金が発生してしまうため、解約をしないでいる」との書き込みが見られた。こうしたネガティブな意見は、ドコモ回線を使ったバッファロー「Portable Wi-Fi DWR-PG」では見あたらず、回線品質によって、人気の差が大きくなってしまっていると言えるだろう。ちなみに、最近話題のWiMAX回線を使った製品に関しては、まださほどの盛り上がりを見せていない。
【図6 イー・モバイル「Pocket WiFi D25HW (にねんM)」のクチコミワードランキング】
【図6 イー・モバイル「Pocket WiFi D25HW (にねんM)」のクチコミワードランキング】

総論:iPadで人気に火の付いた「モバイル無線LANルーター」。タブレット型端末の普及が、人気を後押し

以上見てきたように、モバイル無線LANルーターは、今年5月末のiPad発売によって一気にその人気に火がついた。従来のパソコンよりも、むしろこうしたタブレット型端末や携帯ゲーム機などのデバイスと相性のいい製品と言っていいだろう。今後、iPad以外にも、各社からタブレット端末が発売されると見られており、ますます需要は高まっていくだろう。また、まだ普及がさほど進んでいないモバイルWiMAXも、現在基地局の増設が加速しているほか、NTTドコモが3G回線よりも高速なデータ通信であるLTEサービスを12月から開始するなど、モバイル無線LANルーターの普及拡大を後押しする材料は多い。こうした通信回線の環境改善や、相性のいい携帯デバイスの増加に合わせて、各メーカーから数多くのモバイル無線LANルーター製品が登場することが予想され、しばらくの間は、この人気が続くと見ていいだろう。

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