2010/09/15

ガラスの仮面



舞台『紅天女』(くれないてんにょ)で主役を演じて大女優と謳われた月影千草も今は芸能界を引退し、横浜で静かな生活を送っていた。大都芸能の社長令息・速水真澄と演出家の小野寺一は『紅天女』の上演権を持つ月影から上演許可を得て、女優の姫川歌子主演で『紅天女』の上演を目論むが、月影は『紅天女』の主演は自分もしくは自分が育てた女優にしか演じることはできないと言い、彼らの申し出を拒絶する。そして、10年待って自分が育てた女優が大成しなければ上演権を譲ると言い放つのだった。
そんな矢先、月影は貧しい家庭で育った少女の北島マヤと出会う。マヤは一見何の取り柄もない平凡な少女だったが、一度見た芝居や映画のセリフや役者の動作を正確に記憶するという特技、本能的に役を理解し役に憑かれたかの如く演じるという底知れぬ才能があった。そんなマヤの資質を月影は見抜き、マヤもまた次第に演劇の面白さに目覚めていく。そして、演劇を本格的に勉強しようとマヤは劇団オンディーヌの入団試験を受けに行く。授業料の高さに入団をあきらめたマヤだったが、ふとしたことからパントマイムの試験を受けることになる。そこに居合わせた姫川歌子の娘・姫川亜弓はマヤの演技に衝撃を受ける。父は有名映画監督、母は大女優という両親の一粒種である亜弓は、美貌と才能と卓越した演技力で芸能界においてサラブレッドと謳われており、それまで脅威を感じる相手に出会ったことはなかった。
月影はやがて、後継者育成のために劇団つきかげを旗揚げし、女優を目指すために家出をしたマヤはそこの奨学生として、月影のもとで演劇の勉強をはじめる。やがて、劇団つきかげで頭角を現したマヤを亜弓はライバルとして認め、2人は互いに切磋琢磨しながら演技を磨いていく。
一方、速水と小野寺は『紅天女』の上演権を手に入れるべく、劇団つきかげを潰そうと画策する。しかし、どんな嫌がらせにもめげず、ひたむきに演劇に打ち込むマヤの姿に速水は次第に心魅かれていく。露骨な汚い手を使わないよう小野寺を牽制する一方で、速水はあしながおじさんのように匿名でマヤを支えるうちに、マヤもまだ見ぬ庇護者・紫のバラの人に対して感謝と親愛の情を募らせ、いつか会いたいと願うようになる。だが、その人が時に憎み、時にその優しさに触れて戸惑う相手、速水であるとは気付かない。
順調に経験を積むかに見えたマヤに大きな落とし穴が待っていた。母親の壮絶な死や芸能界の魔の手によってマヤはどん底に叩き落される。ショックと絶望で呆然自失となったマヤは演技をする場を失い、また演ずる事自体が出来なくなってしまう。だがその間、自分と知らせず陰ながら見守り続ける速水や、ライバルでありながらマヤの演技への情熱を信じて待つ亜弓の存在に励まされ、マヤは演技者としてさらに大きく成長していく。
様々な思いが交錯する中、月影はついに志を同じくする2人の少女・マヤと亜弓を紅天女の主演候補に認定する。


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