韓国哨戒艦の沈没事件を受け、米韓両軍は25日、米原子力空母も参加しての大規模な合同軍事演習を日本海で開始した。北朝鮮を牽制(けんせい)するのが狙いだが、演習のあり方を含め、北朝鮮に厳しく対処したい韓国側の思惑通りには進んでいない。一方の北朝鮮は軍事演習に加え、米国が発表した追加制裁にも反発。3度目の核実験をちらつかせ、揺さぶりをかけている。
「不屈の意志」と名付けられた演習は4日間の予定で、非公開で始まった。韓国国防省によると、釜山港に停泊していた米海軍原子力空母ジョージ・ワシントンは25日午前7時ごろ、日本海に向けて出港。米空軍嘉手納基地に一時配備中の最新鋭戦闘機F22ラプターなど両国の航空機約200機のほか、艦艇二十数隻を投入。参加兵力は8千人以上となる見込みという。
演習にあたり、韓民求・韓国合同参謀本部議長は「両軍の決然とした意志と能力を見せつける。今後いかなる挑発にも直ちに対応し、現場で作戦を終わらせる」と強調した。
米韓は毎年、朝鮮半島有事に備えた軍事演習として、夏にコンピューターによる共同指揮所演習、冬に米軍の増援演習と両軍の野外機動演習をそれぞれ繰り返してきた。今回は北朝鮮への対抗措置として臨時に実施された。
ただ、韓国の北朝鮮への対抗措置は順調に進んでいるとはとても言えない。沈没事件後、韓国軍は軍事的対応を含めた報復行動を主張するなど強く反発した。だが、緊張の拡大を避けたいという思いを共にする米国や中国からの働きかけで、ことごとく「修正」を余儀なくされた。
再開するとした南北の軍事境界線近くでの軍事宣伝放送は凍結。今回の合同軍事演習も韓国側は当初、沈没事件の現場に近い朝鮮半島西側の黄海での実施を望んだが、結局は日本海での演習になった。
米軍はさらに「防衛目的」とする演習の透明性を確保するため、日本の自衛官の演習視察を韓国側に打診。植民地支配などの歴史的経緯から渋る韓国側を説き伏せ、自衛官による初の米韓合同軍事演習視察を実現させた。こうしたなか、韓国が得た「成果」と言えるのは米原子力空母の参加ぐらいだ。
韓国側の足元を見透かすように北朝鮮は攻勢をかける。北朝鮮外務省の李東一・軍縮課長は25日、訪問先のハノイで一部の記者団に対し、米韓合同軍事演習について「我々の自主権や安全への挑戦だ。我々は核抑止力を多角的に強化する」と語った。前日には同省報道官が、軍事演習に加えて米国の追加制裁措置にも反発し、核実験の実施をも示唆した。制裁に実効性が伴えば、さらに態度を硬化させる可能性が高い。
北朝鮮関係筋は「沈没事件の処理を巡る板門店での協議が続く限り、対話が基本路線」とする一方、「協議が決裂すれば対決に再び向かうかもしれない」と警告する
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