2014/01/30

「肥満ホルモン」糖尿病呼ぶ 金大グループが解明

金大医薬保健研究域医学系の金子周一教授(恒常性制御学)らの研究グループは29日までに、肥満が糖尿病につながりやすいのは、肝臓でつくられるホルモンが原因であると突き止めた。実験の結果、このホルモンは肥満の人の血中に多く、血糖値を下げるインスリンの働きを妨げることが判明した。肥満が糖尿病を招く仕組みが明らかになったことで、新たな治療法や薬剤の開発が期待される。
 成果は、米国糖尿病学会誌「Diabetes(ディアベテス)」のオンライン版に掲載された。
 糖尿病の原因とみられるのは、肝臓で分泌されるホルモンの一つで、「LECT(レクト)2」と呼ばれる。人間ドック受診者200人を調べたところ、肥満の人ほど血中のLECT2濃度が高かった。
 別の実験では、過剰につくられたLECT2が筋肉において、血糖値を下げるインスリンの効き目を鈍らせることが分かった。「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態で、糖尿病を引き起こす原因として知られる。
 研究グループの御簾(みす)博文特任助教によると、先天的にLECT2を欠損させたマウスは、そうでないマウスより糖の処理能力が高く、血糖値が低かった。
 これらの実験から研究グループは、肥満や食べ過ぎによって分泌されたLECT2が、筋肉でインスリン抵抗性を誘導するため、糖尿病にかかりやすい状態になると結論づけた。研究グループの篁(たかむら)俊成准教授は「LECT2の働きを低下させる薬や治療法ができれば、糖尿病治療は大きく前進する」と話した。

がん転移の抑制酵素を発見…熊本大教授ら

熊本大の尾池雄一教授(分子遺伝学)らの研究グループは、がんの転移を促進させる特定のたんぱく質の仕組みを解明するとともに、このたんぱく質の働きを抑える酵素を発見したと発表した。

 がんの転移を防ぐ薬の開発につながる可能性があるとしている。米科学誌「サイエンス・シグナリング」(電子版)に21日掲載された。

 尾池教授らはこれまで、肺がんや乳がんのがん細胞から分泌される特定のたんぱく質(ANGPTL2)が、転移や周囲に広がる「浸潤」を促進することを確認してきた。

 今回、ヒトの骨肉腫細胞をマウスに移植する実験で、低酸素や低栄養といったがん組織内の環境の変化に伴い、このたんぱく質の遺伝子はDNA脱メチル化という過程を経て活性化することを明らかにした。

 さらに、このたんぱく質がTLL1と呼ばれる酵素によって切断されることを明らかにした。切断されたたんぱく質では、がんの進行が遅いことも確認。このため、この酵素でたんぱく質を切断していけば、がんの転移を抑えられる可能性があるとした。

 今後、この酵素が人体のほかの機能に悪影響を及ぼさないか検証が必要だが、尾池教授は「様々ながんへの応用が十分考えられ、転移を抑える治療につながりうる成果だ」としている。