金大医薬保健研究域医学系の金子周一教授(恒常性制御学)らの研究グループは29日までに、肥満が糖尿病につながりやすいのは、肝臓でつくられるホルモンが原因であると突き止めた。実験の結果、このホルモンは肥満の人の血中に多く、血糖値を下げるインスリンの働きを妨げることが判明した。肥満が糖尿病を招く仕組みが明らかになったことで、新たな治療法や薬剤の開発が期待される。
成果は、米国糖尿病学会誌「Diabetes(ディアベテス)」のオンライン版に掲載された。
糖尿病の原因とみられるのは、肝臓で分泌されるホルモンの一つで、「LECT(レクト)2」と呼ばれる。人間ドック受診者200人を調べたところ、肥満の人ほど血中のLECT2濃度が高かった。
別の実験では、過剰につくられたLECT2が筋肉において、血糖値を下げるインスリンの効き目を鈍らせることが分かった。「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態で、糖尿病を引き起こす原因として知られる。
研究グループの御簾(みす)博文特任助教によると、先天的にLECT2を欠損させたマウスは、そうでないマウスより糖の処理能力が高く、血糖値が低かった。
これらの実験から研究グループは、肥満や食べ過ぎによって分泌されたLECT2が、筋肉でインスリン抵抗性を誘導するため、糖尿病にかかりやすい状態になると結論づけた。研究グループの篁(たかむら)俊成准教授は「LECT2の働きを低下させる薬や治療法ができれば、糖尿病治療は大きく前進する」と話した。
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