2014/03/17

疑惑の小保方氏「24時間監視下」に

とうとう監視役がついてしまった。万能細胞「STAP細胞」の論文に捏造疑惑が浮上している問題で、理化学研究所の野依良治理事長(75)らが14日、都内で記者会見し、重大な過誤があったと謝罪した。研究の中心となった小保方晴子研究ユニットリーダー(30)については「未熟な研究者のデータの取り扱いが極めてずさんだった」と断罪。疑惑にさらされた小保方氏は精神的にかなり参っており、「万が一(自傷行為等)が起こらないように理研の関係者が常に小保方氏を見張っています」と、事情を知る関係者は話している。

 理研が14日に都内で開いた調査委員会の中間報告会見には小保方氏の姿はなかった。小保方氏らは文書で謝罪(別掲)し、論文の取り下げについて検討しているとした。

 小保方氏は現在、所属する理研発生・再生科学総合研究センターのある兵庫・神戸市にいるという。研究活動は停止し、事実上の謹慎状態だ。

 竹市雅俊同センター長が「本人が研究を続ける精神状態になく、研究室に来ないので停止状態になっている」と話す通り、厳しい状況にある。

 理研の事情を知る関係者は「理研の人間が小保方氏に常時、張り付いています。逃亡や証拠隠滅を防ぐためでもありますが、今、小保方氏は精神的にかなり不安定になっている。万が一がないように監視しているということです」と、理研が“見張り役”をつける特別対応を取っていることを本紙に明かした。

 一体、小保方氏に何が起きているのか。4時間に及ぶ会見でも、小保方氏が錯乱状態になっていることが明かされた。

 これまで調査委は小保方氏に3回のヒアリング(聞き取り調査)を行っている。2月20日に調査委の石井俊輔委員長が直接会い、同28日、3月1日はテレビ会議で聞き取り。石井氏は「1回目は非常にクールな対応で的確だった。2回目も緊張しながらも冷静だった。そのときにたくさんの資料提供を求めたこともあり、3回目はお疲れというか、ヒアリングの内容が伝わりづらかった」と振り返る。聞き取りに対する小保方氏の返答も驚くべきものだった。継続調査となった論文データを切り貼りしている疑惑について、小保方氏は「やってはいけないとの認識がなかった」と、研究者として倫理観が欠如していることを告白。他人の論文を盗用した疑惑については「自分で書いたが、どこから取ってきたか覚えてない」と記憶すらはっきりしないという。

 数々の疑惑が持ち上がったため、竹市氏から論文の撤回を提案されると、小保方氏は「相当、心身を消耗した状態で、うなずく感じだった」(竹市氏)とかなり参っていたともいう。

 精神状態の不安定さを示すように14日、米紙「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」に対し、小保方氏は理研に許可を取らずにメールを送っていたことも判明。WSJによると、小保方氏は早稲田大学に提出した博士論文の無断引用疑惑について「現在、マスコミに流れている博士論文は審査に合格したものではなく下書き段階のものが製本され残ってしまっている」とメールで回答したという。

 会見で小保方氏の独断を知った川合真紀理事(研究担当)は「発言の自由を妨げることはできないが、調査中ということもあり、今はお答えしないでいただきたい」と不快感を表明。理研が入手している博士論文は「早稲田から直接入手しているので正本です。調査委員会も正本でやっています」(同理事)と、下書きという主張に首をかしげた。理研に無断で個人の見解を語ったことでも小保方氏の錯乱ぶりがわかる。

 竹市氏は「STAP細胞の真偽は第三者に検証、再現されることが唯一の手段」と、今後の検証を外部の研究者に委ねる考えを示した。これまで理研は「(STAP細胞作製の)根幹は揺るがない」としていたが、この日は「調査前の楽観的な見方だった」(川合理事)と打ち消した。世紀の大発見そのものが揺らいでいる。

 最終報告会見には、小保方氏も出席するとみられるが、おかしな考えだけは持たず、しっかりと釈明してほしい。

キャリアの“お株”を奪うLINE通話本格参入の衝撃

2月下旬、「モバイル・ワールド・コングレス」がスペインで開かれた。世界最大のモバイル関連展示会で、モバイル事業者にとっては新商品のお披露目の場だ。

 日本の関係者らも、こぞってスペインに押し寄せるさなか、日本で衝撃的な発表がなされた。無料メッセージアプリLINE(ライン)が、通話事業に本格参入することを明らかにしたのである。

 その中身は、この3月から、アプリの入っていない携帯電話や固定電話にも、LINEのアプリから通話できるというもの。しかも、大手キャリアの通話料金が1分42円かかる中、携帯電話向けで1分6.5円からという格安料金だ。

 通信網に接続するだけで4円程度かかるため、もうけはほとんどない。それでも「通信キャリアにはできないことをやる。料金設定も追求していきたい」(舛田淳・LINE執行役員)と意気軒高だ。

 LINEの通話本格参入は、通信キャリアのお株を奪いかねない。というのもLINEは、これまでメッセージやアプリ同士の通話のみならず、ゲームやEコマースなどを展開。それにアプリ外への通話まで加われば、キャリアサービスと遜色がなくなるからだ。

 世界3億7000万人まで成長した鍵は、携帯電話番号と電話帳情報をアプリで押さえたことだ。

 電話番号は、基本的にキャリアが本人確認をした信用できる情報で、個人を特定する上でこの上ないもの。加えて、人間関係のつながりがわかる電話帳情報を使って、利用者を爆発的に増やしてきた。

 今、LINE同様のアプリに注目が集まっている。2月だけで、楽天が「Viber(バイバー)」を9億ドル(約900億円)で買収。米フェイスブックは、「WhatsApp(ワッツアップ)」を190億ドル(約1.9兆円)で買収すると明らかにした。

 各社が大枚をはたいてまで欲しがるのは電話帳情報を持っているから。いずれも世界で2.8億人以上の利用者を抱えているが、電話帳に入っている人にまでサービス利用を促せば、利用者はその何倍にも広がりさまざまな事業に使えるとの思惑があるのだ。
● 通信の秘密は守られる? 

 とはいえ、利用者目線で見れば不安も残る。「通信の秘密」との兼ね合いだ。

 今後、LINEを使えば、アプリを入れていない相手の通話履歴までLINE側に残る。しかもLINEは、韓国ネイバーの子会社。海外事業者に重要情報が渡る懸念もある。

 もっとも、LINEは電気通信事業者の届け出をしており、通信の秘密を保護しているとの姿勢を示す。通話履歴の開示についても「法令その他の適式な手続きにのっとって処理されることとなる」とする。

 ただ、「インターネット上のサービスに関しては、サーバのアクセスログが通信の秘密になるかどうかなど、情報の取り扱い方にグレーの部分が残る」と、情報通信総合研究所の小向太郎主席研究員は指摘する。「安心」という面では、キャリアと似て非なると、肝に銘じておいたほうがよさそうだ。