韓国の電炉メーカーが呻吟している。現地の大手メーカー、東部製鉄は12月9日に電炉の操業を停止。一部報道によれば、銀行の管理下で鋼板の加工業者として再出発を図っているという。「(停止した電炉を)中長期的に動かすことはできないだろう」(日系電炉メーカー首脳)。
苦境に陥っているのは、東部製鉄だけではない。JFEスチールが提携する東国製鋼は、2014年1~9月期(第3四半期)に1430億ウォン(約156億円)の最終赤字を計上。大和工業の子会社である韓国YKスチールも、3期連続で営業損失を計上すると見られる。
背景にあるのが、中国産鋼材の猛烈な輸出攻勢だ。日本鉄鋼連盟のまとめによると、2014年1~11月の中国の鋼材輸出量は約8400万トンで、過去最高だった2007年1~12月をすでに2000万トン近く上回っている。
中国における建築用鋼材の需要が鈍化する中でも、現地の鉄鋼メーカーは増産を続けており、2014年の粗鋼生産量は8.2億トン(前年比5%増)と過去最高を記録する見通し。自国で消費しきれない鋼材が大量に輸出されることで、世界の鋼材価格を押し下げている。
煽りを食っているのが、輸出比率の高い日本と韓国の鉄鋼メーカーだ。特に電炉メーカーの生産する鋼材は、建築用など汎用品が中心で競争力が低い。中国産の安価な鋼材に引っ張られて、輸出価格の低迷は深刻になっている。
ただ、苦境の真っ只中にある韓国に比して、日本の電炉メーカーには薄日が差してきた。国土強靭化計画や東京オリンピックに向けたビルの建て替え需要を追い風に、建築用の鋼材需要がようやく底打ち。堅調な内需を背景に、採算の悪い輸出の比率が縮小しているからだ。
また、高値に悩まされてきた原料の鉄スクラップ価格も「転換点に来ていると感じている」(東京製鉄の今村清志・常務取締役)。
これまで鉄スクラップ価格は、国内の鋼材需要とは無関係に乱高下してきた。1990年代には1トン当たり2万円を超えることがなかったが、2000年代に入ると状況が一変。韓国や中国向けの輸出が増えたことで、2004年に3万円を突破して以降、高値圏で推移してきた。
しかし、日本や米国からスクラップを輸入する韓国で東国製鋼などの電炉メーカーが生産を縮小したのに加え、トルコなど新興国の電炉メーカーも、自社で生産するより中国産鋼材の加工したほうが安上がりなことから、鉄スクラップの購入を控えだした。
こうした需要減を見越して、日本国内の鉄スクラップ価格は急速に下落している。日本鉄リサイクル協会のまとめによれば、関東・中部・関西3地区の鉄スクラップ価格は2014年4月に1トン当たり3.1万~3.2万円程度で推移していたが、10月以降は2.8万円程度まで値下がりした。
日本には40社近い電炉メーカーが乱立するが、韓国は10社程度に集約されている。かつて日本の電炉メーカーは、韓国の安い電気代や集中生産による高収益体質をうらやんできた。ただ、堅調な国内需要や原料安を背景に、日本企業の業績は回復傾向にある。一方で、輸出や内需の停滞に苦しむ韓国企業の業績は逆に悪化している。
鉄鉱石と石炭を原料に生産する高炉メーカーの場合、2013年度の純利益実績ではすでに、ポスコの1兆3550億ウォン(約1477億円)に対して新日本製鉄が2427億円と、2008年度以来5期ぶりの逆転を遂げている。ライバル関係にある日韓の鉄鋼バトルは高炉業界だけでなく、電炉業界でも収益構造の逆転が起きようとしている。
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