英国の高速鉄道の車両製造事業を、日立製作所を中心とした日本勢が受注する方向になった。政府は官民一体によるインフラ輸出の推進を成長戦略の柱に据えており、今後は原子力発電や水事業など大型案件の海外展開が加速する可能性が高い。ただ、インフラ輸出は国内事業に比べ、相手国の財政問題や政情不安などのリスクが高く、克服すべき課題も山積している。
「支援してもらった日本政府や関係者に心から感謝する」(日立の中西宏明社長)。一日の英側の発表を受け、日立社内には安堵(あんど)感が広がった。
同社は二〇〇九年に優先交渉権を獲得。しかし一〇年五月の英国の政権交代後、緊縮財政の徹底で「年明け」とみられた受注先の絞り込みはじりじりと先送りに。社内には焦りの色も広がった。
日立は国内需要の頭打ちを背景に、鉄道や原発などインフラ事業の海外展開を成長戦略の中核に位置付け、経営資源を集中。欧州に加え、需要増が期待できる中国などの新興国をターゲットに鉄道事業の拡大を狙う。
枝野幸男官房長官は二日の記者会見で「日本の企業連合の取り組みが評価され、政府としても大変喜ばしい」と歓迎。今回、菅直人首相や関係閣僚が英側に直接働き掛けたことを挙げ「官民一丸」の成果を強調した。
日本はこれまでもベトナムでの原子力発電所の建設やサウジアラビアでの水道施設の基盤整備など、政府と民間が一体となったインフラの輸出に取り組んできている。
特に新興国では「政情不安などのリスクも大きい」(電機大手)として、政府に対する企業側の期待が大きい。
政変などで事業を継続できない場合や、システムに致命的なトラブルが発生した場合など、民間企業だけではリスクを取りづらいためだ。企業側からは「何十年もの長期にわたるオペレーションや保守を、どこまで保証できるか難しい」(メーカー関係者)との声も多い。
実際に、日本勢が受注を目指していた米フロリダ州の高速鉄道事業は、州の財政負担増を理由に中止の可能性が高まっている。
貿易金融機能の強化など、海外展開のリスクに対応する政府の枠組み構築が急がれる。
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