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インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の取引所Mt.Gox(マウントゴックス)が取引を停止したことは、5年におよぶビットコインの歴史の中で最大の挫折となった。今後はどうなるのだろうか。
ビットコイン支持者の多くは、マウントゴックスの一件で得られる教訓がビットコインの成熟と繁栄に役立つことを期待している。一方で、ビットコインの評判が回復できないほどに損なわれたと主張する人々もいる。
シティグループの為替ストラテジスト、スティーブン・イングランダー氏は26日の顧客向けリポートで、「ビットコインはますます投機的になっている」と述べた。
イングランダー氏は「ビットコインの保有者にとって、今回の件は不正行為や安全性の低さと関連しうる一連の問題の中で最新かつ最大のもの。しかも、こうしたリスクは何年も前から認識されていたにもかかわらずビットコインの開発者は完全に解決しようとしてこなかったようだ」と指摘。「ビットコインの分散的な構造は多くの人にとって魅力だが、1つの問題は、その構造のために根本的に解決することが困難なのかどうかだ」との見方を示した。
マウントゴックスでの取引は停止されたが、他の2つの取引所の動きを追っているビットコイン専門ニュースサイト「コインデスク」によると、ビットコインの価格は26日、8%上昇し577.52ドル(約5万9000円)となった。もっとも、これは25日にマウントゴックスをめぐるニュースが広がり、一時的に23%超急落した後の反発だった。年初には1ビットコイン=700ドルで取引され、昨年12月上旬には1100ドルを上回っていた。
不正行為はビットコイン利用者にとって大きな懸念ではなかったこともイングランダー氏は指摘しているが、マウントゴックス騒動は不正取引が行われる可能性が浮き彫りにした。
同氏によると、以前はセキュリティー上の問題に不正取引の可能性は含まれていなかった。「不正行為の影響を受けないことがビットコインの魅力の1つだったが、既知の欠陥が意外にも悪用されたことは大きな痛手だ。今やビットコインは不正を懸念しないといけない決済システムの1つに過ぎないように見える」
イングランダー氏は、ビットコインが直面する3つのリスクを示している。
1. ビットコイン利用者や潜在的な投資家が、取引や保有の安全性を信用しなくなる
2. 他のインターネット通貨がビットコインの市場シェアを奪い始め、「先駆者利益」が減少する
3. 分散的でない従来の規制の枠組みの中で、従来の金融機関が一般的なビットコイン技術を使用することで、競争が生じる
イングランダー氏はこう結論づける。「ビットコインの帳簿上の時価総額は競争相手をはるかに上回っているが、ビットコインの資産を他の資産に変換する能力は非常に限られている。ビットコインは、その成功に賭けて巨額の投資をした保有者が大勢いるため、先駆者利益を享受している。しかし(通貨の)『価値の保存』という観点からすると唯一の価値は評判だが、最近の出来事でその評判が揺らいでいる」