ホンダが、小型自動車向けの新型ハイブリッドエンジン「スポーツ・ハイブリッド・インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ(IDCD)」を発表した。かねて表明していた燃費ナンバーワンハイブリッドカーを実現するエンジンシステムで、2013年以降、全世界に投入される新型フィットなどの小型ハイブリッド車に搭載される。
今回開発したIDCD(=右写真=)は、エンジンとしては、既存の1モーター型ハイブリッドエンジン(排気量1.5リットル級)に比べて30%以上の効率向上を実現した。市販車に搭載するにあたっては、車体の軽量化や空力性能の改善なども合わせ、現行フィット・ハイブリッドに対して、30%を超える燃費向上が見込めるという。
新型フィットのハイブリッド車は、トップセラー車に成長したトヨタのコンパクトハイブリッド車「アクア」を上回る燃費数値になる見通しで、価格帯は現行車とほぼ同等になる。
国内自動車市場では、トヨタがハイブリッド車を牽引力に快走しており、ホンダは再注力中の軽自動車「N BOX」で食らいついているものの、ハイブリッド車では後れをとっている。今回発表したハイブリッドエンジンで、トヨタの独走に何とか「待った」をかけたい考えだ。
従来システムとの違い
ホンダはこれまで既存のエンジン、トランスミッションシステムに、補助動力としてモーターを組み込む形でハイブリッド車を開発してきた。この方法は簡単・低コストでハイブリッド車を実現できるものの、組み込むモーターに制約があるなど、燃費性能の向上には限界があった。これに対して、今回は、1モーターによるハイブリッド専用のシステムとしてエンジンやトランスミッションをオリジナルで開発した。
エンジンとモーターはクラッチを介して接続するシステムとし、加速時や高速走行時にはエンジン+モーターアシストで走行、エンジンが苦手とする発進時や低速走行時には、クラッチを切り離してモーターのみで走行が可能だ。また減速時もエンジンとモーターを切り離して減速エネルギーを効率的に電池に回収できるようにした。減速エネルギーをより多く電池に回収できれば、その分エンジンによる発電が不要になり燃費向上につながる。
既存のホンダのハイブリッドシステムは、エンジンとモーターが直結している。このため、モーター単独走行ができずエンジンが苦手とする低速走行が非効率になっているほか、減速時も減速エネルギーがエンジンブレーキとしてロスするため、電気エネルギーとしての回収効率が悪くなっていた。
モーター単独で3kmの走行が可能
またバッテリーにはリチウムイオン電池を採用、少ない電池重量で効率的な充放電を可能にしている。これによりモーター単独で3キロメートル程度の走行が可能になった。
トランスミッションは、伝達効率を最大限に引き上げるため、7段のデュアル・クラッチを採用した。デュアル・クラッチは2枚のクラッチを用いて、コンピュータ自動制御でギアの偶数段と奇数段を交互に切り替えていく変速方式。ベルトを用いた無段変速(CVT)に比べ、ギアのかみ合わせで動力をタイヤに伝達するため原理的にロスが少ない。ギアの変速感を伴ったキビキビした加速性能も特徴だ。1モーターによるハイブリッドエンジンを前提に、ホンダとしては初めてデュアル・クラッチを採用した。
今回は排気量1.5リットルのシステムを発表したが、もっと小排気量のエンジンにもこのシステムは適用できるという。さらなる低燃費化にも期待できそうだ。