バセドウ病は20~30歳代の若い女性に多い病気です。ちょうど就職、結婚、妊娠、出産など人生の大きな節目となるできごとが重なる年代で、それが病気の発症に深くかかわっていたり、治療を受けるうえで大きな不安材料になったりしています。なかには、バセドウ病になると治らない、子どもを産めないなどと心配する人もいますが、これは大変な誤解です。病気について正しく理解して適切な治療を受ければ、子どもも産めますし、普通に生活することができます。
バセドウ病は、免疫の異常によって起こる自己免疫疾患です。私たちの体には、外敵から身を守る免疫機能が備わっていて、細菌やウイルスなどが侵入したとき、抗体をつくって排除しようとします。自己免疫疾患では、何らかの理由でこの免疫システムに異常が起こり、自分の体の成分も敵とみなし、自分自身を攻撃する抗体をつくり出してしまうのです。
バセドウ病の場合、敵とみなされるのは甲状腺にあるTSH受容体といわれる部分です。ここは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)を受け取る受容体ですが、これが敵とみなされると、TSH受容体に対する抗体がつくられ、TSH受容体を刺激します。すると、甲状腺ホルモンがつくられ続け、過剰に分泌されることになります。
このようにバセドウ病は、免疫の異常によって起こることはわかっていますが、どうして免疫異常になるのか、根本原因は明らかになっていません。
そもそも甲状腺ホルモンは、全身の代謝を促す働きをする「元気のもと」のような役目を果たしています。通常、分泌量は一定に保たれていますが、過剰に分泌されると、さまざまな症状となって現れます。このような状態を甲状腺機能亢進(こうしん)症といい、その代表的なものがバセドウ病です。
典型的な症状は、首(甲状腺)が腫れる、目つきが鋭くなる、食欲はあるのに体重が減るなどです。ほかに、どうき、不整脈、頻脈、高血圧、イライラ、のぼせ、多汗、疲れやすい、のどの渇きなどもよくみられる症状です。