安倍晋三政権は22日、政府主催「竹島の日」記念式典の開催を見送り、領土問題担当の島尻安伊子内閣府政務官を島根県主催の式典に派遣した。閣僚の出席を見送ったのは、韓国による同県・竹島の不法占拠を容認しないとのメッセージを発信しつつ、25日の朴槿恵(パク・クネ)次期大統領の就任式に配慮したためだ。しかし、韓国側の反発は強く、日本側の「最大限の配慮」(石破茂自民党幹事長)は通じなかった。
「竹島は言うまでもなくわが国固有の領土だ。政府は、わが国の立場を明確に主張し、法にのっとり冷静かつ平和的な問題解決のため全力で取り組んでいく」
式典で島尻氏は、領土問題にかける安倍政権の決意を強調したが、その一方で「韓国は基本的な価値、東アジアの平和と繁栄の確保などの利益を共有する重要な隣国だ」と述べ、韓国側への“気遣い”もみせた
韓国や中国に毅然(きぜん)とした態度で臨む「安倍カラー」をにじませつつ、韓国との関係悪化にいかに歯止めをかけるか-。
この命題への答えが、政務三役で最も「軽量」の政務官の派遣だった。島尻氏は式典後、韓国の抗議に対して「他国にどうこういわれるものではない」と反論したが、自らの出席を「大局的な観点からの配慮だった」と認めた。
昨年8月、李明博大統領が竹島に不法上陸し、その後、天皇陛下の謝罪を要求したことで日韓関係は冷え込んだ。それでも、首相が朴政権との関係改善を重視するのは、沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による挑発行為や、北朝鮮の核実験で、日米韓3カ国の連携強化が急務だからだ。
このため、首相は朴氏の大統領就任式に麻生太郎副総理を派遣し、朴氏との会談を模索させる。麻生氏は22日の記者会見で「両国が手をつないで未来志向で事を進めていくのが一番肝心だ」と述べた。
外務省幹部も22日、「慰安婦、竹島といった難しい問題に焦点が当たりがちだが、北朝鮮の核やミサイルへの危機感では共通している。そこに焦点を当てるべきだ」と強調した。